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視準

<労働よもやま話>(63)
育児・介護を担う社員の転勤は?

Q.育児・介護などの家庭事情により会社の転勤命令が違法と判断され得るケースには、どのようなものがあるか
A.業務上の必要があっても、当該転勤命令が労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合は違法となり得る
(『労政時報』3972号2019年5月10・24日)
 育休から復帰した夫が二日目に転勤を命じられたというSNSの書き込みが、先日非常に話題になりました。子どもの保育園がようやく決まり妻も職場復帰する矢先だったので猶予が欲しいと希望するも会社に受け入れられず、結局夫は退職せざるを得なかったという案件です。
 業務上の必要があれば、就業規則に則って会社は労働者を自由に配転(転勤)させることができます。ただし回答されているように「労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合」は転勤命令は無効になります。家族の介護や療養・看護などの理由による判例が解説で挙げられています。
 それにしても「通常甘受すべき程度を著しく超える」というのはどの程度なのかわかりにくいですね。持病があるなどの特別の事情がない限り、育児を理由にした転勤無効という判例はいままではないのではないかと思います。
 しかし前記の案件が大きな反響を生んだことからもわかるとおり、もはや会社の一方的な転勤命令に諾々と従って当然、というのは当たり前とは思われなくなってきているようです。厚生労働省も家庭生活の安定に考慮して、転勤について企業に再考を促す「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」(2019年)を公表しています。
 前記の案件では転勤を受け入れるつもりだったが、会社が強行的で辞めざるを得なかったということです。今後人材を確保するためには育児だけでなく介護や闘病などさまざまな事情がある労働者に働き続けてもらう必要があるでしょう。会社も柔軟に対応していく姿勢が必要ではないでしょうか。
エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)  千本 沢子


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