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視準

<労基法でよもやま話>(54)
基本給と固定残業代の区別

《質問》固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?
《回答》(前略)「固定残業代」を支払うこととする場合、@通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分(固定残業代)とを判別できるようにした上で、A割増賃金に当たる部分(固定残業代)の金額が労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要があります(後略)(厚生労働省サイト「スタートアップ労働条件」)
 私が勤務する大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)は労働関係の専門図書館ですので、労働に関わる裁判や審判、調停などの情報を目にする機会が多いのですが、近年よく目にするのが「固定残業代」です。
 「固定残業代」は残業時間を毎月一定に定めて残業代を定額で支払う制度です。みなし残業代とも呼ばれます。会社側はあらかじめ残業時間を設定しておくことで労働時間の管理と給与支払いの計算の煩雑さを免れるというメリットがあります。働く側としても毎月決まった残業代がもらえるという利点があります。
 一方、問題もあります。実際の残業時間が規定していた残業時間を超えていてもその分が支払われなかったり、「残業代は支払ってあるから」と、そもそも残業時間自体が管理されていなかったりすることもあるようです。
 近年の判例でよく焦点になっているのは「通常の労働時間の賃金に当たる部分」と「割増賃金に当たる部分」が明確に区分されているかどうかです。募集時に給与の額を固定残業代を含めた金額を示すことで給与を過大に見せかけるなどのトラブルが多発しているとして、厚労省も基本給の額、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法などを求人票などに記載するよう求めています。
 また、固定残業代を「◯◯手当」の名目で支給している場合も、他の手当と固定残業代を分別する必要があります。
エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)  千本 沢子


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