太陽の塔 No.341 「太陽の塔」が重要文化財に指定される。「高度経済成長期の日本を象徴する貴重なレガシー」と評価されてのことだ。だが、これを制作した岡本太郎は冥土でどう思っているのだろうか。 太陽の塔は言わずと知れた1970年大阪万博のシンボルだ。だが、岡本は万博のテーマ「人類の進歩と調和」に共感していたわけではない。むしろ、テーマを批判し、人が「機械の奴隷」なっていることに警鐘を鳴らす意味で作り上げた。 丹下健三設計の大屋根を、わざわざぶち抜く形で建てられた太陽の塔。その内部には高さ45bという巨大な「生命の樹」があった。そして、地下から天上へと伸びる樹の枝には原生類から始まる生物の模型が配され、単細胞から人類へと進化していく様と命の根源を表現していた。 万博終了後、解体が予定されていた太陽の塔だったが市民の声がそれを止めた。強烈な印象を残すその姿と「生命の樹」。それらが人々の心を動かしたのだろう。 あれから55年。いま世界は温暖化による異常気象に悩まされ、各地の戦火もやむことがない。人として進化も調和もしていない時代に太陽の塔は重要文化財になる。私はそれを戒めと受け止めたい。(ぴ)
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