ここ数年、各地で民藝展が開かれ、人々の関心を集めている。その民藝という言葉が誕生したのは今から100年前、京都で親交を深めた思想家の柳宗悦、陶芸家の濱田庄司、河井試沽Yによって提唱された。 京都市京セラ美術館で開かれている特別展「民藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」は、この民藝運動の草創期に焦点をあてている。 関東大震災を機に柳は京都に居を移し、濱田や河井と出会う、そして彼らは暮らしの中の雑器が持つ美に価値を見いだし、それを「民衆的なる工芸=民藝」とした。その後全国のさまざまな道具類の蒐集(しゅうしゅう)を開始し、新たな民藝の創作に着手した。 展示の始まりは民藝誕生のきっかけとなった木喰仏、その素朴で温かみのある姿が誰をも魅了する。次に青木五良や黒田辰秋たちが立ち上げた新作民藝の制作集団「上加茂民藝協団」や、最初の民藝館である三國荘の紹介、さらに民藝の代表的建築である式場隆三郎邸の再現展示へと進む。 もちろん各地の蒐集品、バーナード・リーチや芹沢C介といった民藝運動を牽引(けんいん)した作家たちの作品も並ぶ。最後の章では京都で民藝運動に共感し支援した人たちの活動とともに、民藝の歩みや事例を紹介している。 京都ならではの展覧会。民藝の思想と出発点を体感することになる。
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