リボンの付いた帽子に百合やチューリップなどの花々、そのカラフルな版画に目を奪われる。前衛芸術家として世界に名をはせる草間彌生の展覧会「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」だ。松本市美術館が所蔵する作品に作家蔵作品を加えた約330点が京都市京セラ美術館に集まった。 種苗業を営む家で育った草間、動植物から話しかけられる幻覚の体験の中で描くことを決意した。1957年、28歳の時、単身渡米して網目や水玉といった独自のモチーフを確立したが、1973年、体調を崩して帰国。その頃から版画作品を手がけるようになった。 展覧会は、華やかな色使いの初期の作品に始まり、ラメを使って光の揺らぎやきらめきを表現した作品、草間の代名詞ともなった水玉の南瓜(かぼちゃ)たち、空間全体を網目や水玉で埋め尽くす境界なきイメージへと続く。 中でも圧巻なのが伝統木版と草間の前衛芸術が共創した七色の富士。草間が描いた巨大な富士山の原画をベテランの彫り師たちが版木に写し取り、刷り上げた木版画だ。原画のパネル(原寸大)とともに展示された作品たちに誰もが引き込まれる。 壮大な草間の創作活動の一つ版画芸術。ほとばしる生命力に魅了される。
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