会場である5階のロビーに現れたのは、天井から伸びる赤く長い糸で織りなされた森、その中で存在感を放つ巨大な赤いドレス。オーストラリアの強制収容所に着想を得たという《インターナルライン》だ。コンセプトは「愛/ai」。来場者は赤の色彩に包まれ、さながら母親の胎内をたどる気分で展示室の入り口にたどり着く。 作者は塩田千春。ベルリンに拠点を置き、国際的に活躍する現代アーティストだ。大阪中之島美術館で開かれている「塩田千春 つながる私(アイ)」は、16年ぶりに出身地で開く大規模個展となった。そのテーマは「つながり」。「私/I」「目/EYE」「愛/ai」の三つの「アイ」を通してアプローチしている。 絡まり合う白い糸がドームを作り、水滴がしたたり落ちる―《巡る記憶》―。赤い糸がつくり上げた家々―《家から家》―は、心の奥底に存在する自身とつながりを表現したインスタレーションだ。そして展示された絵画や映像作品などからも作者のあふれでる内面を感じる。 最後に現れた《つながる輪》が圧巻だ。天井からの無数の赤い糸。そこに編み込まれ大きな円を描いているのは、「つながり」をテーマに人々から寄せられた声の紙片だ。そして来場者は、いつの間にか作品に共感し取り込まれ、参加することになる。
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