目の前に現れるあふれるばかりの色彩。それでいて凜(りん)とした気品を感じさせる屏風(びょうぶ)絵に目を見張る。これほど鮮やかで華麗な花鳥画を他で見たことがあっただろうか。 作者は明治後期から昭和初期にかけて活躍した日本画家、石崎光瑤だ。竹内栖鳳の門下で筆頭となるほどの実力の持ち主だったが、戦後すぐの1947(昭和22)年に62歳で没したためか、その名はあまり知られていない。 そんな彼の初の大回顧展となる特別展「生誕140年記念 石崎光瑤」が京都文化博物館で開かれている。初期から晩年までの作品82点と資料14点を展示、光瑤の画業の全貌を紹介する。 1914年の第8回文展で《筧(かけい)》が褒状を受賞するなど早くから才能を開花させた光瑤だったが、1916年に訪れたインドでの経験が彼の作品に大きな影響を与えた。帰国後描いた《熱国妍春(ねっこくけんしゅん)》《燦雨(さんう)》は、それまでの日本画にはない絢爛(けんらん)さを極めた花鳥画となり、文展、帝展で特選を受賞。大きな注目を集めた。 特別展ではこれらの作品の他、高野山・金剛峯寺で制作した襖絵(ふすまえ)20面や若冲を模写した《鶏之図》、晩年の線描を駆使した静謐(せいひつ)な作品までが並ぶ。そして本格的な登山家であった別の側面も紹介。彼の多彩な魅力に触れる展覧会だ。
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