あべのハルカス美術館で開館10周年記念「広重 ―摺(すり)の極(きわみ)―」が開かれている。歌川広重といえば名所絵の《東海道五拾三次》。ピンとこない方は某メーカーのお茶漬けの素に付いてくるおまけの浮世絵カードを思い出してほしい。 北斎とともに浮世絵版画の世界に風景画と花鳥画のジャンルを確立し、国民的な浮世絵師となった広重。前・後期合わせて約330点の作品が本展に集まり、初期から晩年までの彼の画業を総覧する。 展示の約8割は海外コレクターの所蔵品。久々に里帰りした作品も多く、役者絵から美人画、名所絵など幅広いラインナップだ。そして《京都名所》や《江戸近郊八景》といった揃物(そろえもの)は、前期または後期に、全ての作品が展示される。 また初摺(しょずり)の作品も数多く、今もなお鮮やかに残る広重ブルー(ベロ藍)を見ることができる。この摺の極ともいえる当時の高い技術も見どころの一つだ。 広重は江戸や京都など各地の名所を描いた風景画が有名だが、それ以外にも名所を背景に描く美人画や肉筆画、千社札(せんしゃふだ)や絵封筒など、さまざまな作品を残している。そんな魅力的な作品にもこの展覧会で会える。知っているようで、見たことない広重を堪能できる展覧会だ。
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