京都では27年ぶりとなる最後の文人画家富岡鉄斎の大回顧展「没後100年 富岡鉄斎」が京都国立近代美術館で開かれている。 幕末の京都で生まれた鉄斎は、儒学・陽明学、国学・神道、仏教など諸学を幅広く学び、同時に南宗画、やまと絵など、さまざまな流派の絵画を独学した稀有(けう)な画家だ。 鉄斎は良い絵を描くためには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要という先人の教えを守り、何を描くにも対象の研究に努めた。また、全国各地の勝景をめぐり、理想の山水を表出した。本展では、代表作《富士山図》をはじめ、初期の屏風《山水図》、50年ぶりの公開となる《渉歴余韻冊》など、これまで見られなかった作品が一堂に会する。 4章で構成された展示では、作品とともに、実際使っていた絵画道具や生涯をかけ収集した印章が展示されている。また、研究成果としての筆録などが、物事に対し広く関心を持ち「文人多癖」と呼ばれた鉄斎という人物、そして彼の日常を感じさせてくれる。 生前から今日まで国内外で高く評価され、町の人々からも親しまれた鉄斎。画壇の巨匠から新世代の画家にまで敬われた、自由闊達(かったつ)で大胆な、その表現を楽しめる展示となっている。
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