目に飛び込んでくるのは極彩色の絵。中でも赤が強烈な印象を残す。芝居の一場面を切り取った屏風(びょうぶ)絵には、血しぶきに染まる人や苦悩の表情を浮かべた人たちが描かれ、そこから叫び声が今にも聞こえてきそうだ。この緊迫感あふれる絵を描いたのは、土佐の「絵金」こと絵師・金蔵。幕末から明治初期にかけて活躍し、独自の画風で描きだした屏風絵は、今も地元高知の夏祭りを彩り続けている。 その絵金の作品を紹介する展覧会「幕末土佐の天才絵師 絵金」があべのハルカス美術館で開かれている。高知県外では半世紀ぶりという大規模展覧会だ。 展示の中心は屏風絵だが、同様に芝居を描いた絵馬提灯や土佐の風俗を描いた絵巻、そして五月の節句の幟(のぼり)なども並び、天才と言われた絵金の画業が一望できる。会場の一部には夏祭り会場が再現されており、高知の人々が絵金の屏風絵に親しんでいる様子も疑似体験できる。 夏祭りの夜、ろうそくの揺らめく灯りに浮かび上がる屏風絵は、キャッチフレーズ通り「恐ろしいほど美しい」。異彩を放つ絵金の作品群だ。その強烈な個性に出会える展覧会となっている。
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