人々は古来より天変地異や厄災など、人知の及ばない現象に遭遇したとき、それを引き起こしたのは異界のものたちの仕業だとし、畏怖し、祈りを捧げてきた。 大阪歴史博物館で開かれている特別企画展「異界彷徨(ほうこう)―怪異・祈り・生と死―」では、館蔵品を中心に古来から人々が信じ、恐れ、祈り続けてきた異界にまつわる資料を展示し、紹介している。 序章「異界のあらわれ」で始まる展示は「怪異と幻想」「祈りと願い」そして「生と死」と三つのテーマで展開する。 目を引くのが天狗(てんぐ)の面、そして河童(かっぱ)や妖怪たちを描いた絵だ。これらは異界の住人として描き出されたものであり、人々はその存在を信じることで厄災を受け止め、乗り越えていったのだろう。また、人々は、安寧な暮らしや子どもの健やかな成長を願うため、やはり神仏など異界の力に頼った。それを示す魔除(まよ)けの置物や神社に奉納した絵馬、子どもの節句の流し雛(びな)や幟(のぼり)も展示されている。他にも地獄を描いた巻物や墓から出土した副葬品などが展示されており、興味を引く。 科学が発展した現在、厄災の原因も明らかになった。だがそれでも私たちは神仏に祈りを捧げるなど、無意識のうちに異界との交流を続けている。そんな異界を改めて見つめる展覧会となった。
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