オーストリアとスイスに挟まれた小国、リヒテンシュタイン侯国は、世界で唯一、侯爵家の家名を国名としている。もともと神聖ローマ帝国を治めたハプスブルク家に仕えた貴族であった侯爵家。彼らは、優れた美術品を収集することが一族の栄誉という家訓を掲げ、長い年月をかけて世界屈指の個人コレクションを形成した。 あべのハルカス美術館で開いている「ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」は、この華麗なコレクションを紹介するものだ。 展覧会は、侯爵家の人々の肖像画や優美な宮廷文化を今に伝える絵画を紹介する「リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活」から始まり、「宗教画」「神話画・歴史画」「磁器―西洋と東洋の出会い」「ウイーン磁器製作所」「風景画」「花の静物画」と続く。 侯爵家秘蔵のルーベンスやブリューゲル(父)などの作品をはじめ、北方ルネサンスやバロックなどの油彩画が見るものを圧倒する。また西洋に渡った東洋の磁器が、貴族の趣向に沿って装飾金具を施された姿や、その後、ウイーン窯で作られるようになった磁器の優雅な姿が、貴族の暮らしを彷彿とさせる。 宮廷を彩った絵画と陶磁器の競演、そして東洋と西洋の文化の出会い。その美を体感したい。
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