江戸時代に活躍した絵師たち。その主流は狩野派や円山派といった各流派の絵師だ。だがそんな流派の様式にとらわれず、新しい表現を試みた絵師たちも数多くいた。彼らは「異端」とされ、永く正当な評価を受けていなかったが、そこに光を当てたのが日本美術史学者の辻惟雄さん。著書「奇想の系譜」で6人の絵師を紹介した。 あべのハルカス美術館で開かれている「奇才 ―江戸絵画の冒険者たち―」展。そのタイトルにある「奇才」とは、優れた、たぐいまれな才能という意味で、有名、無名問わず新しい表現を求めた人たちのことを指す。 葛飾北斎80歳半ばの作品、《上町祭屋台天井絵 男波》と《東町祭屋台天井絵 龍図》が来場者を迎える会場。京都、大坂、江戸、諸国と地域ごとに章立てされた展示は、「奇想の系譜」にあった伊藤若冲などの絵師だけでなく、地方の一地域だけで活躍した絵師や、主流と言われた円山応挙などが取り組んだ新しい表現まで、全国津々浦々の奇才35人の作品が並ぶ。 原色の衣をまとう奇っ怪な姿の仙人を描いた蕭白(しょうはく)。ユーモアや温かみがある年中行事絵は耳鳥斎(にちょうさい)。大胆な筆致と構図で巨大なとんぼを描く林十江(じゅうこう)などなど。江戸期、斬新な表現に挑んだ絵師たちの作品に酔いしれたい。
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