掛け軸に巻物、屏風(びょうぶ)に行灯(あんどん)絵、そして奉納絵馬まで。実にさまざまな作品群に目を見張る。幕末から明治の前半にかけて主に東京で活躍した絵師、河鍋暁斎(きょうさい)の特別展「没後130年 河鍋暁斎 鬼才!Kyosai!」の会場だ。 3歳でカエルの絵を描いたという暁斎。7歳で歌川国芳に弟子入りし、その後、狩野派で修業を重ね卓越した画力を培った。加えて時代の大転換期という状況が自在な感性を持つ絵師に育て上げた。社会や政治を風刺する錦絵で人気を集めた暁斎は、あらゆる分野から引っ張りだこの売れっ子となった。そしてさまざまな依頼に応じての画業により、引き幕や西洋劇(かぶき)の行灯絵、工芸品までと多彩な作品群を形成したのだ。また描かれた題材も人間に菩薩(ぼさつ)、魚や鳥、幽霊や骸骨と実に幅広く、まさに鬼才と呼ばれるゆえんだ。 展覧会のなかでも注目したいのが写生と下絵。暁斎の観察力や描写力、さらには作品を生み出す過程までも体感できる。またドイツから里帰りして出展された7点の作品も必見だ。これらは暁斎と親交の深かったドイツ人医師・ベルツの旧蔵品で、これぞ暁斎といえる傑作がそろう。 暁斎の無限の表現力に出会える特別展となった。
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