京都国立近代美術館で開催中の「没後50年 藤田嗣治展」は、これまでにない規模と内容を誇る大回顧展となっています。著名ではありながら、全体を展望する展覧会が少なかった藤田嗣治。2006年に同じく京都国立近代美術館で大規模な回顧展が開かれて以来、大小の展覧会がありましたが、今回は質、量ともに史上最大級のものとなっています。 この展覧会のために欧米から集められた主要な作品の中に、日本初出品である「エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像」があります。藤田が独特の「乳白色の下地」の表現などでパリで売れっ子になった1920年代の人物表現の代表作のひとつです。 「乳白色の裸婦像」が10点以上並ぶ様子は圧巻ですが、パリに渡る前の若き日の絵画、北米・中南米・アジアを周って描かれた作品、カトリックへの信仰に基づく各種の造形など、これまで目にする機会が少なかった作品にも出会うことができます。 画家の遺族から寄贈された資料が整理され、進められている研究の成果が今展覧会に反映されています。藤田の手法・表現がどのように変化していくのか、その時代背景と画家の心情を読み解きながら導かれる構成となっています。
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