大阪歴史博物館の「鏨の華」展 刀装具の華麗な美の世界
 

 わずか数センチの幅の小柄(こづか)に鳳凰(ほうおう)の姿が刻まれている。威厳のある獅子にボタンの花を組み合わせた図柄の美しい小柄も。
 江戸時代、金工の技術が向上、武器である日本刀の拵(こしらえ)、つまり鍔(つば)や小柄、笄(こうがい)、目貫(めぬき)、縁頭(ふちがしら)に緻密な彫刻を施すようになった。そしてその華麗な文様、繊細な表現は、いつしか美術品の域に達していた。そんな刀装具に魅せられたのが明治時代の実業家、光村利藻(としも)だ。3000点以上の作品を収集し、製作依頼という形で金工や刀匠の技術を守り伝えようとした。
 この特別展「鏨(たがね)の華―光村コレクションの刀装具―」は、後年、根津美術館に引き継がれた1200点もの光村コレクションを中心に、「鏨」という小さな彫金道具から生み出された美と技術の世界を紹介するものだ。
 鍔の表裏を通して描かれた老杉(ろうさん)図や鍾馗鬼(しょうきにおに)。鬼念仏(おにのねんぶつ)や笛吹地蔵をかたどった目貫。どれ一つとってもその小ささと描き出される美の極致に息をのむ。さらに光村が製作を依頼した日本刀は、刀身に和歌と菊花を彫り込み、拵すべてを和歌にちなんだ菊の意匠で統一するという豪華さで、その出来栄えに目を見張る。
 これまであまり注目されてこなかった刀装具という美の世界。光村の足跡とともに、彼が見いだした職人技の極みを堪能する展覧会となった。

 
期間 3月18日(日)まで
会場 大阪歴史博物館(地下鉄谷町線・中央線「谷町四丁目」駅下車、9番出口前)
開館時間 午前9時半〜午後5時、金曜日は8時閉館(入館は閉館の30分前まで)
休館日 火曜日
観覧料 一般1200円、高・大学生800円、中学生以下・障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1人含む)は無料
問い合わせ 大阪歴史博物館
TEL06(6946)5728