巨大な人頭、頭上には横たわる裸の男とそれにまといつく蛇、猿、フクロウ、そしてなんだかわからぬ生き物。鼻から噴出した金貨が大樽でワインに浸かる男女に降り注ぎ…。この展覧会のポスターにも用いられているヒエロニムス・ボス工房《トゥヌグダルスの幻視》。見るからに奇妙な絵である。奇才ヒエロニムス・ボスはベルギー・フランドル地方で中世に活躍した画家。写実的な技法で創造力豊かな世界を描き出した。大変な人気を博したボスの作品は後世の作家にも大きな影響を与えていく。 展覧会は、ベルギーに生まれた奇想の表現を、15、16世紀のフランドル絵画から現代のコンテンポラリー・アートに至るまで紹介する内容となっている。
「第二のボス」と言われたブリューゲル(父)、巨匠ルーベンスなどの中世フランドル絵画の流れ、産業革命以後の象徴派の作家たち、ロップス、アンソールなどの死とエロスをモチーフとした退廃的な表現、20世紀のシュールレアリスムから現代までの絵画や版画のみならず、彫刻、音、インスタレーションなどさまざまな表現による作品にも奇想の系譜が見いだされている。
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