暗雲垂れ込めた天空に一対の巨大な龍。一頭は大きく口を開け今にも動き出しそうだ。もう一頭はゆったりと身構え、観客を凝視している。このダイナミックな雲龍図は建仁寺の大方丈を飾っていたものだ。 京都国立博物館の開館120年を記念するこの特別展覧会「海北友松」は、桃山時代最後の巨匠と称される絵師、海北友松の生涯と画業を紹介する大回顧展だ。 武士の家に生まれた友松だが、幼いころ父親が戦(いくさ)で死に京都の寺に入った。その寺の和尚の勧めで狩野派の門をたたき絵師の道を歩んだといわれている。友松が頭角を現したのは60歳を過ぎてから。建仁寺の大方丈や大中院、霊洞院などに障壁画や屏風(びょうぶ)絵、掛け軸を描き名声を得た。 展覧会では初期から最晩年までの画業を紹介。狩野派の特徴と友松の画風が混じり合う初期作品から、空間を絶妙なバランスで取り入れた作品、衣服が風にはらんで袋のように見える袋人物≠描いた作品、そしておおらかな人物描写が特徴的な晩年の作品と次第に独自の画風を確立していく様が見て取れる。 また、友松の足跡を著す文書や60年ぶりにアメリカから里帰りした「月下渓流図屏風」など興味深い展示も多数。孤高の絵師、海北友松に出会える展覧会だ。 |