現在、大阪・中之島の国立国際美術館で開催中の「クラーナハ展―五〇〇年後の誘惑」。世界13カ国から貴重な作品が集められた日本で初めての大回顧展である。
「五〇〇年後の誘惑」のサブタイトルのとおり、クラーナハの描く女性像が持つ奇妙なアンバランスさ、冷めた視線は、時を超えても見るものを落ち着かない心持ちにさせ、また引き付ける。
クラーナハというと、このような魅惑的な女性画がすぐに思い起こされるが、実は彼の画業の一部でしかない。16世紀初頭のドイツで宮廷画家として活躍したクラーナハは多数の肖像画を制作しており、それらは厳格さと
端正さをもって描かれている。また、著名なマルティン・ルターの肖像画もクラーナハの手によるものである。
工房での効率的な協同制作システムを確立していたクラーナハは、息子や多くの弟子たちとともに絵画を大量生産していた。多数制作された版画も今回見ることができる。また、ピカソやマルセル・デュシャンら近代美術の巨匠たちの
クラーナハに触発された作品も併せて展示されている。 剣と男の生首を持つ《ホロフェルネスの首を持つユディト》は3年の修復を経ての展示。よみがえったみずみずしい色合いを鑑賞したい。 |